『寝ても覚めても』

向かいあうこともなく二人の男女が並び立つラスト・ショットの途方もない美しさ。
しかも、ここには、二十一世紀の世界映画史でもっとも美しいロングショットさえ含まれている。
濱口監督の新作とともに、日本映画はその第三の黄金期へと孤独に、だが確実に足を踏み入れる。

『苦い銭』

真夜中の歩道や
高層住宅のテラスや薄ぐらい廊下などに、
孤独な男女が黙って立ちつくしている。
彼らや彼女らは、その後、
饒舌すぎるほど自分を主張し始める。
それがこの映画の
荒々しくも繊細な魅力にほかならない。

『月夜釜合戦』

赤いスカートの女性による爽快な自転車の走行に導かれ、出鱈目のようでいて繊細きわまりない演出が描き上げるこの愉快な作品が16ミリで撮られたことを、とことん祝福しようではないか。

『鉱 ARAGANE』

  • 新宿 K’s cinema

被写体を美しく見せることより、美しい被写体を見ることの無上の悦びに徹したこの監督は、見ることの悦びをいくえにも増幅させる驚くべき傑作を撮り上げてしまった。
それは、必然的な奇跡以外の何ものでもない。