試写会『ヴァンダの部屋』

■試写が終わって会場が明るくなったとき、前の席で立ち上がった人に見覚えがあると思い、僕にしてはめったにないことだが、いま観た映画がとてもよかったからか、「阿部君ですか?」と声をかけると、阿部君はいぶかしそうにしていたが、宮沢ですと名乗るとようやく気がついてくれた。八年ぶりに会ったのだった。
 【中略】
■映画は、絶望的な現実を、絶望的な眼で見ている。書きたいことがいろいろあるが、公開が来年の春だというのでまたこんどゆっくり。『ヴァンダの部屋』(ペドロ・コスタ監督作品)。とてもよかった。
 【中略】
■映画の余韻にひたるのと同時に、路駐したクルマが切符をきられていないだろうかという不安も抱え、渋谷のシネアミューズの建物を出た。
 【中略】

■『ヴァンダの部屋』(ペドロ・コスタ監督作品)の話になったが聞くところによると、あの日、阿部和重君ばかりか、中原昌也さんなど作家もいたというし、蓮實重彦さんもいらしたというやけに濃い空気の漂う試写室だったとのこと。気がつかなかった。