蓮實重彦名誉教授講演会 「曖昧さ」について-『「ボヴァリー夫人」論』を例として (東大新図書館トークイベント12)

蓮實重彦名誉教授講演 「曖昧さ」について-『「ボヴァリー夫人」論』を例として
蓮實名誉教授と石田副館長の対談
質疑応答

いかなる歴史的な時代においても、人類は「長編小説」の普遍的な形式を定義したことはない。「散文のフィクション」といいかえても、事態は混乱するばかりである。西欧伝来の「詩学」も「美学」も「修辞学」も、それを定義しそびれている。『ボヴァリー夫人』は、意識してこうした定義の不在と向きあった最初の――ことによったら最後の――作品である。そのことの歴史的な意味を明かしてみたい。