『木靴の樹』

戸外には馬車が行きかい、室内には蝋燭のランプが灯され、一家には何人もの子供が生まれ、男は黙って木靴を造り、女は小川で洗濯し、子供たちは野原を駆けまわり、病人が出れば祈祷師が呼ばれるという北イタリアの貧しい農村。教会で結婚式を挙げたばかりの若い男女が馬車で船着き場に向かい、家族と別れて無蓋の河船でミラノに向かい、デモで騒然とした街に驚きつつも徒歩で修道院にたどりつき、そこで初夜を迎えるまでの寡黙な美しさ。そのスタンダードサイズの画面には、映画がいま生まれたばかりだというかのような悦ばしい鼓動が脈打っている。