『阿賀に生きる』

未来に向けて投影する映画
佐藤真監督の『阿賀に生きる』は、人類のかけがいのない「現在」を未来に向けて投影する。それは、被写体となった方々の忘れがたい表情やその背後に拡がる風景の「現在」のみならず、それにキャメラを向けたスタッフ全員の「現在」をも未来に向けて投影している。あらゆるすぐれた映画が、たんなる「過去」の記録にとどまりえず、いつの時代にも貴重な「現在」としての刺激をあたりに波及させうるのは、そうした理由による。その刺激を顔一面に受けとめるために、この作品をぜひともニュープリントのフィルムで見なければなるまい。