第七回東海大学湘南フィルムフェスティバル 座談会:鈴木清順、蓮實重彦、山根貞男

オペレッタ狸御殿」(鈴木清順監督'05年)美男美女が恋して踊れば映画になる。それさえ決まれば何したっていいじゃないか… しかし何より、三人が対談の席で揃うのは初めてだという鈴木清順山根貞男蓮実重彦各氏のお話に心踊らされました。その女優さえ出ていれば映画なんてなんでも良かったんだと上げられた四人の女優の傾向から、監督はとにかく面長の女優が好なのだとさっそく蓮実重彦に指摘され、興に乗った監督は、そんな女優が出演しているならひたすら一時間半でも二時間でもアップだけを映していればよく、要するに監督なんてものはいらないねぇんだとばかりに、控えめな映画制作心構えを話しておられました。「狸御殿」をやるまではオダギリ・ジョーを知らなくて、チャン・ツィイーについては何やら世界でも有名な「丸顔」の女優らしいとだけ意識していたらしく、しかも二人は監督自身の人選ではなかったそうだ。オダギリ・ジョーには「演ずるな」の指示をすることで、お姫様顔ではないチャン・ツィイーとのバランスをとった。 蓮実「なぜ正面からばかり撮られたのですか?カメラが向こう側に行ったり、セットの中に入りませんね」 鈴木「最初俯瞰で絵巻みたいに雲を流して立体的にやろうとして幾らかかるか計算したら、とても出来そうにもないとわかって舞台みたいにしたんだ。カメラを向こうに回さないのは時間が掛かるからです。つまり金が掛かるのです。そうすると弁当代から何から余計に重みますよね。映画は金の問題なんですよ」…とか即物的だったり。
鈴木「アメリカで撮られた戦争映画なんて見たくもありません。戦争に負けたものの悲しみがわかってないんですよ彼らは。」 山根「映画としても認めないんですか?」 鈴木「戦争に勝つ映画なんて見たくないんですよ。でも日露戦争あたりのことを撮った映画なんてのはいいねえ」 山根「え?勝つ側の映画でいいんですか?」 鈴木「負けた悲しみを知ってるからいいんですよ」 …とか禅問答をしたりと、ひたすら爆笑を誘っておられました。 二人に誉められて帰ると言い出したり、立派な花束をもらった帰り際に、これじゃあ電車に乗れないよ〜なんて駄々を捏ねてみたりもしてました。

http://www.hum.u-tokai.ac.jp/bgd/archive/2007/film07repo_2.html