小津安二郎生誕百年記念国際シンポジウム OZU 2003

…というわけで、シンポジウム1日目は終了しました。
パネリストの名前を見るだけで想像がつくように、お腹いっぱいの1日となりました。チケットは全部売り切れだとのことでしたが、チラホラと空席が見受けられたのは、やはり平日ということでチケットは買ったものの、出席が叶わなかったファンが少なからずいたということでしょうか。
感想としては、何よりも小津監督の生誕100年を祝福するために、国内外からこれだけの面々が一堂に会したという事実―この一事で感動で胸が熱くなったということに尽きます。
不満を言えば、「世界の評論家が見た小津」などは、これだけの錚々たるメンバーが各々テクストを携えて参加するのに、丸一日あっても時間が足りないのは自明の理だろうに、2時間半しか時間が与えられなかったこと―これが何よりも悔やまれました。
また、キアロスタミ監督が病気のために途中退席せざるを得なかったのも残念でした(が、病院から戻る途中のタクシー内で口述したという素晴らしいメッセージが蓮實重彦氏から朗読されたのは感動的でした)。
しかしながら、この長時間のシンポジウムのなか、小津監督の映画のように美しく輝く瞬間が幾度となく訪れたのも事実です。
かつて一歳にして父親を失った大女優が、その父親と主演を演じた女優と対面するシーン(岡田茉莉子さんと井上雪子さん)はプログラムを見れば予め予想されたものとは言え、やはり感動的でした。また、ソノシートから復元された岡田時彦氏の声が会場に響き渡ったのも感動的な瞬間でした。 カイエ・デュ・シネマ前編集長のシャルル・テッソン氏から岡田さんへの花束贈呈は美しい場面でしたし、逆に岡田さんからオリヴェイラ監督への95歳の誕生祝いの花束贈呈も然り(因みにオリヴェイラ監督の誕生日は12/11と言われていますが、パスポートの記載は小津監督と同じ12日生まれになっているという事実が発覚。本当はどちらが正しいのだろうか…などという素朴な疑問は寄せつけないような圧倒的な大監督の存在感が印象的だったのですが)。
そのほか、井上雪子さんが補聴器を持ってこなかったことで、司会の蓮實氏との対話が成立しなくなるかのような危殆が生じたり、彼女が滔々と「最近の健康状態」についての報告をし始め、またそれを会場内の誰もが止めることができずに、このままこのシンポジウムはどこに漂流して行くのだろうという危機感が漂うというサスペンスフルな展開を見せたりしたのも、「道化の精神」を語り、数多くの喜劇映画をも撮った小津監督の生誕祭に相応しい出来事だったと言えるかも知れません(因みに、小津=おっちゃんというあだ名をつけたのは、井上さんだったという新事実も発覚しました)。
さらに個人的な印象を述べるなら、吉田喜重監督の乃木希典のような風貌と矍鑠たる振る舞い、吉田氏が小津監督との濃密な交通について語っていた際のペドロ・コスタ監督の表情、シンポジウム全編を通してのオリヴェイラ監督の好奇に満ちた、子どものような瞳―そうした身体的な振る舞い・表情に目を奪われ、ときには感銘をも受けていました。(あ…あと「晩春」についての蓮實氏の論文に対してと思われるオリヴェイラ監督の子どものような純真な疑問・反論を、質問の矛先を観客全員に対してのものだと上手にかわわした蓮實氏の進行には、なるほど大学の総長として学内政治を巧みに乗り切るにはこうした技量が必要なのだなと変な感心をしました)。
 【中略】
シンポの具体内容については、恐らく書物などになるものと思われますし、また、NHK BSで、新年1/4と1/7にこの内容が放映されるとのことです。

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http://www.geocities.jp/cows_in_the_farm/backnumber3.html
http://www2.ocn.ne.jp/~mermaid/03ozusympo.html
http://www5b.biglobe.ne.jp/~bjt/ybj44.html
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/cinema/1058795573/511